Copyrights 2012 Hiroyuki Noritake

Essay

Vol.16

初リハーサルの朝、奥様のタルタル鮪丼とお味噌汁で目覚める。佐渡さんも僕もマヨラーであることがここで露呈される。

朝もやのブローニュを走り抜け、リハ会場へ。オペラの練習用に建てられたという古いレンガ造りのスタジオは、すでにウォームアップを始める団員さんたちで活気に満ちていた。急いでセッティングを済ませるや、佐渡さんの「Ready?」の合図。僕にとってヨーロッパ大陸での最初の「ドンッ!」が高い天井いっぱいの空気をふるわせた・・・。

各パート、いろんな問題があぶり出される。佐渡さんの音楽への入り込み方の速さと深さはさすがと言うほか無い。豊かな表情と、母国語ではない言葉を、いとも自然に操りながら皆を引き寄せてゆくその存在感は、ジャンルを問わず世界のトップで活躍するヒトのみが持ちえる、アレだ。僕もたっくさんの問題をかかえたまま初リハは終了。でもまだ3回あるっ!頑張るのだ。

第二回目のリハは早速その夜におこなわれたが、時差ボケのせいか、どんどん気が遠くなっていく・・・。佐渡さんのボルテージはどんどん上がっていく・・・。

今回、佐渡さんは部分練習を返すとき、「**小節目から!」というのを伝えるのにフランス語のあと(僕のために)英語も併用してくださったわけだが、ヒートアップしてくるとたまにその段取りをお忘れになることが・・・。ひとり取り残される僕。蛍光ペンと注意書きでいっぱいの譜面が空しい・・・。大丈夫!まだ2回あるっ!照準を合わせるべきは本番だ!!

リハ帰りの車中。
「パリのトンネルの照明って、とっても綺麗ですね!」
「そう、フランス人は光の使い方がうまいんやね!フランスにはいろんな光があるんやそう、光の文化なんよ。則竹さんも団員たちの光になってやって欲しいんや・・・。」
「はいっ!!・・・・・?????」
その意味を深くかみ締めながら僕はついに睡魔と抱き合った。

Peace,