Copyrights 2012 Hiroyuki Noritake

Essay

Vol.20

2002年10月6日、巴里シャトレー劇場。

夢中で叩いた。佐渡船長の手綱さばきに必死でしがみついた。ピアノ・トリオもできるだけ遠い宇宙へ飛んでいけるようにと、心の重りを空っぽにした。アンコールにと佐渡さんが設けてくださったフリーのドラムソロも無心に演った。

全てが終ってステージ・フロントにラインナップしたとき初めて、そこに満員のオーディエンスがいたことに気がついた・・・。その中から友達と、そしてやはり日本から急遽駆けつけてくれたマネージャーの金森くんを見つけ出すには、この劇場は広すぎた。

佐渡さんに連れられて舞台袖へとさがった瞬間、急に涙が込み上げてきた。こんな経験は初めてだった。枯れてしまうまで出し尽くした。演り終えた充実感、極度の緊張からの開放感・・・

それだけじゃなかった。どうしても自分で許せないことがあった。「West Side Story」のSymphonic DanceのハイライトともいえるTutti・・・みんなと半拍ズレた。これまでのリハーサルでは一度もなかったこの部分でのミス。

僕のミス。

終演後の半日は劇場周辺の散歩。

前回入りそびれたサンシャペル教会へ。細い螺旋階段を上っていくとそこはステンドグラスの礼拝堂。日の光の度合いによって微妙にその色彩を変化させてゆく。無性に祈りたい気持ちが身体中の細胞を目覚めさせる。

地球も僕ら生き物も、日の光に生かされているんだ・・・ステンドグラスって命への賛美歌そのものじゃないか!光のハーモニーに僕はいつしか、明日の本番への希望と自信を取り戻しかけていた。

コンシェルジュリー(マリー・アントワネットが最期の時間を過ごした牢獄)にも行った。自由に生きていられること、こうして好きなことをやりに遠くParisにまで来れたことを本当に感謝したい気持ちになった。

去年の12月になんの因果かこの僕にシエナ・ウィンド・オーケストラとの共演の話が舞い込み、佐渡さんや、素晴らしいクラッシックの演奏家たちと出会うことができ、今こうして僕はParisにいる。

僕はただ、大好きなドラムと向き合ってきただけなのに。

セーヌの夕焼けも美しかった。

夜遅くに佐渡さん宅へ戻る。
「お帰り~。さぁ、則竹さん、シャンパンや!!」

僕は本当に幸せ者やなぁ。

Peace,