Copyrights 2012 Hiroyuki Noritake

Essay

Vol.42 / 2004.11.13

9月は松本・須藤・則竹 Trioで幕開けた。

あれは2000年だったか、Trio The Squareと称して全国津々浦々、旅したことを思い出す。今回は三日間3ヶ所のみではあったけど楽しいプチ・ツアーだった。

このようなJazzな旅は、たいていお店の備品ドラムを使わせていただくことになるのだが、この3ヶ所・・YAMAHA、Pearl、TAMAと奇しくも国内三強ブランドが袖を分けた。

かつてお世話になったブランドたちは、その生い立ちが何処製であるかを越えて、もはや個としてのアイデンティティーを放つほどに使い込まれていた。

そういえば、山木秀夫さんの、あのJazz仕様Gretchは中古で手に入れられたそうだが、当初、ヘッド交換できないほどシェルが歪んでいたそう。僕なら諦めるか、買ったお店に苦言の一言も漏らしてしまうであろうところ、さすが氏は一味違う。

1:先ずは金属パーツを全て取り外して洗剤で清め、長年の労をねぎらう。
2:心して取り付けなおす。
3:新しいヘッドを張る際は、ヘッド側のリム(アルミの縁)にニッパーで切り込みを入れ、「そこは、ほれ、グワッシュ!とね!」無理矢理にシェルにはめ込む。

のだそうな・・。そんな荒業、世界中のどの教則本を探しても載ってないに違いないです。しか~し!!あの、甘くも骨のある深淵なる山木's Gretchサウンド!なんである。

弘法筆を選ばず、ならぬ、弘法筆と繋がる!といったところか。なんともArtyなお話し。

さて、その後は、あの佐渡裕さんとの再会の舞台が待っていた。Paris以来約二年ぶりの共演。

今回は京都市交響楽団を中心に、日本オペラ界のスター達や、「浪花の歌姫」越智順子さん、ベースに納浩一氏、そしてやはりParis以来の共演となる天才ピアニスト、ブルーノ・フォンテーヌさんらをゲストに迎えての、その名も「Viva!バーンスタイン」という豪華なコンサート・ツアーであった。

「則竹さ~ん!!元気しとった??っ!?」思わず佐渡さんの胸に飛び込む。再会を祝うとは、まさにこの瞬間の感動をいうのだなぁ。本当に「光」そのもののような人。

演奏曲目はParisの時とはかなり違っていて、僕がもがき苦しんだWestside Storyからの出題(?)が今回は無しとのこと。リベンジしたかったんだけどなぁ・・。

だからといって今回は楽勝なのか?というと、とんでもない話で、ドラムという楽器をオーケストラとハーモニーさせるのはホント~~にホネが折れる大仕事。

広いステージ上をモニターに頼らず音量コントロールしながら、聴感上のタイミングと客観的タイミングの誤差を常に計算にいれつつ、極めて情報量の多い譜面を視界の片隅に置きながら、刻々と変化してゆくマエストロの「光」のナヴィゲートを一瞬たりとも見落とすことなく、然るべき目的地へ、より美しく到達せねばならない。もう超能力使うしかないのである。

というわけでリハーサルから数えての一週間、今回も緊張の日々となったわけだが、最終的にやってくるあの幸福感は、やはり佐渡さんの持つ、あの「光」のヴァイブの成せる業なんだと、つくづく思う。

それから、今回もプレゼントしていただいたトリオ演奏のコーナー。音響、楽器の配置、共にParisの時よりも良好で、超高速「New York, New York」もリラックスして楽しめた。越智さんを迎えての「Somewhere」「Some Other Time」も、非常に密度の濃いアンサンブルを繰り広げることができたと思う。

圧巻だったのは「不安の時代」でのブルーノさん。僕は降り番だったけど、そのダイナミックな作品力と圧倒的な演奏力に息を呑んだ。その作品の生まれた時代背景も作者の意図も、よく知らないのだけれど、涙が溢れてきた。僕の中の何かが強烈に反応した。

ツアー二日目の神戸公演の打ち上げ後、有志のみで二次会へ。僕と佐渡さんの共通の知り合いでもある小西氏の経営する「木馬」を襲撃した。

この「木馬」は僕が学生時代に大変お世話になったジャズ喫茶であり、したがって氏は僕の大切な恩師のひとり。ことある毎に人生相談にのってもらい続けて早22年ということになる。

震災後は移転を余儀なくされたが、そこはエスプリ魂の権化のようなマスター。内装を自ら手がけ以前よりもオシャレになり、神戸の文化人たちが集うカルチャー・カフェとなって久しい。ゆったりと朗らかで幸せな打ち上げであった。

翌日の大阪公演が控えてさえいなければ、朝まで飲んでいたかったなぁ・・。ここだけの話ですが・・・マエストロ!本当に有難うございました!!

Peace,