Copyrights 2012 Hiroyuki Noritake

Essay

Vol.46 / 2007.1.7

2006年が、ついに一度のエッセイ更新も果たせぬまま去っていってしまった。何度かトライはしたものの、完成にいたらなかった文章たち。作曲もまたしかり。伝えたい何かが確実にあるのにそれらが結晶化しなかった。どちらも誰に頼まれた訳でもないけれど、無性に残念。時に2007年お正月・・恒例の「忠臣蔵」ドラマよろしく、ついにその無念を晴らすときがきた。前回のエッセイはMontreal Drum Festivalの本番前夜で途切れていたっけ?ならばその続きを回想することから始めないわけにはいかぬ。なんともう一年二ヶ月も前の出来事である。

本当に素晴らしい体験だった。万国ビックリショーさながら世界中から集まってきたスーパードラマー達。そんな中、日本代表でエントリーした我らがDNAは当時の僕たちにとってベストといえるパフォーマンスを見事やってのけ、気がつけばスタンディングオベイションの大喝采を浴びていた。「和合の精神」が世界の共感を呼んだ瞬間だった。すっかり自信をつけた僕たちはその後に続くCANADA横断単独ツアーをも大成功に納め、「ふたりでひとり~!世界はひとつ~!」などと声高らかに帰国の途に付いたのであった~ベンベン。

この旅で改めて感心したのは神保さんの海外での身のこなし。英語仏語を介しての意思のやり取りは言うに及ばず、セッティングの早さや、予期せぬ難局における判断によどみが無く美しい。その経験力と学習能力の高さは驚異的というほかない。きっと一日の長さが僕の何倍もあるに違いない、としか思えないのである。そしてもうひとつ・・僕はこの旅で、その後の自身に大きな影響を与える出会いをしてしまう。Keith Carlockというドラマー。彼との出会いがなければ僕の2006年はまた全く違ったものになっていただろう。

Montrealで僕たちの次にステージに上がったのが彼だった。あのSteely Danに認められ、Stingのツアーにも大抜擢されたKeithくん。僕たちと同じYAMAHAのエンドーサーということもあり、前夜の夕食会では同じテーブルを囲んで共に700gのステーキをたいらげた仲。また嫌煙家が増え続けるアメリカンドラマー界において今どき珍しいヘビースモーカーで、途中何度も一緒にレストランを抜け出し、星降る極寒の闇の中、どうしてもタバコがやめられない心の弱さを慰め合った仲。とんでもない巨漢だという以外はフツ~のアメリカ人のアンちゃん。彼のプレイはCDで聴いていたし、よく知っているつもりだった。ところが・・!!!!

いくらファッションに興味がないとしても「そ~れ~は無いやろ!」なラフ極まる格好でひとりステージに上がったKeithくん。バックトラックもなしにノンストップで繰り広げた30分間・・ステージ袖で僕は感動に打ち震えていました。比類なきパワー、圧倒的な音色の美しさ、引き算も足し算もないフレーズの純粋さ、創造的独自性と普遍性、重力の存在を忘れさせるダイナミックなスティックの軌道、スピード感と巌のごとき安定感、それから充実感がこぼれ落ちてきそうな表情・・僕が求めてやまない「現象」の全てが、突如!見たことも聴いたことも無いカタチでそこに現れたのです。宇宙との交信を終えた彼は恥ずかしそうに一礼すると足早にステージを去っていきました。「今この目で見たことを日本に帰ってからゆっくり整理してみなければ!」これが僕のもうひとつのStory in CANADAであった。帰国後すぐにこの土産話をアシスタントYくんに打ち明けた。電子未来的分野にも明るいYくん、早速ネット上でKiethくんの秘蔵映像が見れることを発見。それから約10ヶ月、アシスタントYくんとのKeith Carlock共同研究の日々が始まるのであった~ベンベン。

「まずはセッティングでしょう!」と、日ごとに水平化してゆくタム、スネアの角度。コーティング化されてゆくヘッド。そしてグリップからストロークにいたるまでの見直し・・試行錯誤を繰り返すうち自分なりの着地点が見つかったのは10月のKORENOSツアーだった。この模様はたまたまライヴレコーディングされる機会を得て、僕自身にとっても非常に興味深い貴重な記録となる(5月頃発売の予定!)。自分の音楽哲学(これ自体進化してゆくものだが)と新しい手法がひとつに実を結んだときの・・そのワクワク感は、何ものにも代え難い至福のとき。まるで新しい自由の原野に立った気分だ。

このような音楽的新陳代謝は大小様々な周期でからみあいながら僕のドラマー生命を呼吸させている。止まってしまうと自由だったはずの原野に雷が落ち、ヒョウが降って来て、いずれ荒野と化してしまうだろう。2006年の僕自身が新鮮でいられたのはKeithくんという若手名ドラマーとの出会いが、実は非常に大きな理由なのだった。

2007年も僕は呼吸をやめない。もっともっと自分の知らない自分にワクワクするために!!
頑張るぞ~っ!!!!
つづく・・

Peace,